ぴか歯科

歯科医師です。これまでの人生や仕事についての考えを述べます。

【研修医向け】親知らずの抜歯に伴う「下歯槽神経損傷リスク」を分かりやすく説明するには?

※歯学部生〜研修医を対象とした投稿のため、多少の専門用語が含まれます

 

本日のツイートで、診療を楽にするためにやっておくといいことの1つとして「言葉のストック」をご紹介しました。

 

言葉のストックの中でも、患者さんに分かりやすく説明するために、今回は「親知らず(智歯)の抜歯に伴う下歯槽神経損傷リスク」について、実際に私が使っている言葉の例をご紹介します。

 

下顎管に近接する智歯を抜歯する際に生じる併発症に「下歯槽神経の損傷」があります。では、下歯槽神経の損傷リスクを患者さんに説明する際、どのような説明をすると理解が得られやすいでしょうか?

 

「この辺(下歯槽神経支配領域、下唇からオトガイにかけて)を触った時に感覚が鈍くなる」というのを患者さんがイメージできるように説明するため、私がよく使っているのは

 

万人向け「ご飯粒が付いてても分からないことがある」

お化粧をする女性向け「口紅を塗った時に違和感を感じる」

 

といった表現です。通り一遍な説明の中にも、より日常生活での分かりやすい具体例を出すことで、「あー、なるほど」と患者さんにもイメージをしてもらいやすくなります。

 

上記は私が使っていて患者さんの反応がいいなと思ったものに過ぎません。自分らしい、より良い言葉のストックを作っていくには、説明が上手な先生は何と言われているのかを注意して聞いて取り入れること、実際にその症状で治療をされている患者さんのご意見を伺うこと、自分が近い体験をした場合はその時のことを言語化してみること、などをやってみるといいかと思います。

 

ちなみに麻痺や知覚鈍麻の感覚を伝えるには、「薄い膜を一枚貼ったような感じ」「歯科医院で麻酔した後のような感覚」などと表現すると伝わりやすいです。

 

もちろん併発症はない方がいいし、起こらないように気を付けます。でも、生じる可能性をゼロにすることはできないから、事前に説明し、患者さんからご理解を得ることは大切です。自分では説明した気になっていても、患者さんに伝わっていないのなら、説明をしていないのと同義です。だから、本当の意味でのインフォームドコンセントを得られるよう、日々工夫を重ねていきたいものですね。

 

次回、「併発症」について、投稿の予定です。併発症と合併症、偶発症。これらの言葉の使い分けは正しくできていますか?少し恥ずかしいような語呂も含め、ご紹介します。ちょっと低レベルな投稿になりそうですが......ご覧いただけると嬉しいです。

 

2022.4.22追記

併発症について投稿予定でしたが、急遽内容を変更して投稿いたしました。

申し訳ありません。